昼の部(午前11時)
演目と見どころ
竹田出雲作の浄瑠璃『芦屋道満大内鑑』を歌舞伎に移した狂言で、通称「葛の葉」と呼ばれているこの作品は、安倍晴明は陰陽師・安倍保名と白狐との間に生まれた子であるという「信太妻」伝説をもとにしています。
安部保名に一命を助けられた白狐は、保名の許嫁の葛の葉に化け、保名との間に所帯をもち、一子をもうけます。しかし本物の葛の葉姫が現れたことにより、子を夫に託し、障子に「恋しくば尋ねきてみよ和泉なる 信田の森の恨み葛の葉」という別れの歌を残して姿を消します。様々な技巧を使って狐の本性を描いていく面白さや、人を愛してしまった狐の悲しみや子別れの愁嘆など、親子の情愛溢れる名作です。
祝言を挙げる娘福子のお祝いに、分限者宝斉より末広がり(末広の扇子)を買い求めるよう命じられた太郎冠者ですが、末広がりが何か分からず困惑してしまいます。都へ赴いた太郎冠者は万商人の口車に乗せられて末広がりとして傘を、さらに、想いを寄せている福子へのお土産として毬を売りつけられてしまいます。傘と毬を持ち帰った太郎冠者ですが…。平成3年に狂言を基に書き下ろされた軽妙洒脱な舞踊をお楽しみいただきます。
近松門左衛門が享保6(1721)年に、実際に起きた油屋の後家殺し事件を題材に人形浄瑠璃のために書いた作品です。その後、明治になって歌舞伎として上演する機会が増えました。河内屋の息子与兵衛は、放蕩三昧で借金もある身。今日も喧嘩のはずみで、侍に無礼を働いてしまいます。さらに与兵衛は、継父の徳兵衛や妹おかちにまで手をあげる始末。見かねた母おさわは、与兵衛を勘当し追い出すのでした。その晩、金の工面に困った与兵衛は、同業の油屋の女房お吉を頼ろうと店を訪れるのですが…。刹那的に生きる青年が引き起こす悲劇をご覧いただきます。
配役
葛の葉
女房葛の葉 | 中 村 七之助 |
葛の葉姫 | |
安倍保名 | 中 村 梅 枝 |
柵 | 中 村 |
信田庄司 | 片 岡 亀 蔵 |
末広がり
太郎冠者 | 中 村 勘九郎 |
万商人 | 中 村 国 生 |
宝斉娘福子 | 中 村 鶴 松 |
分限者宝斉 | 片 岡 亀 蔵 |
女殺油地獄
河内屋与兵衛 | 尾 上 菊之助 |
お吉 | 中 村 七之助 |
豊嶋屋七左衛門 | 中 村 勘九郎 |
太兵衛 | 坂 東 亀 寿 |
芸者小菊 | 中 村 梅 枝 |
小栗八弥 | 中 村 萬太郎 |
おかち | 坂 東 新 悟 |
白稲荷法印 | 市 村 橘太郎 |
綿屋小兵衛 | 片 岡 松之助 |
河内屋徳兵衛 | 嵐 橘三郎 |
おさわ | 上 村 吉 弥 |
山本森右衛門 | 河原崎 権十郎 |
夜の部(午後5時)
演目と見どころ
戯作者になろうと話題作りにはやる大店伊勢屋の若旦那・栄次郎。今日も親の許しも得ずに、長屋の娘おすずと婚礼を挙げることとなりましたが、戯作者仲間である仲人の太助の行方が知れず、大変な騒ぎとなっています。やがて無事におすずと夫婦になった栄次郎でしたが、自らの書き下ろした黄表紙が評判にならない為、吉原の花魁帚木(ははきぎ)を身請けしたり、手鎖の刑を受けようと役人の佐野準之助に頼み込んだりする始末。挙句、栄次郎は帚木と心中するという大茶番に打って出ますが…。井上ひさしの直木賞受賞作「手鎖心中」を舞台化した作品で、〝ちゅう乗り〟もみどころの笑いにあふれる作品です。
大坂の豪商椀屋久兵衛は、遊女松山太夫に入れあげ、身代を傾けたために座敷牢に幽閉されてしまいます。松山への恋しさのあまり正気を失った久兵衛は、松山を探すために牢を抜け出します。まどろむ椀久の前に現れたのは恋焦がれていた松山。二人はしばしの逢瀬を楽しみますが、松山の姿は消えてしまい、すべては幻だったと気づくのでした。久兵衛と松山が織りなす、人生の儚さを描く幻想美にあふれた舞踊の世界をお楽しみください。
配役
浮かれ心中
若旦那栄次郎 | 中 村 勘九郎 |
おすず | 尾 上 菊之助 |
太助 | 坂 東 亀三郎 |
帚木 | 中 村 梅 枝 |
清六 | 中 村 萬太郎 |
栄次郎妹お琴 | 坂 東 新 悟 |
伊勢屋番頭吾平 | 市 村 橘太郎 |
遣手お辰 | 中 村 |
役人佐野準之助 | 片 岡 亀 蔵 |
伊勢屋太右衛門 | 坂 東 彦三郎 |
二人椀久
椀屋久兵衛 | 尾 上 菊之助 |
松山太夫 | 中 村 七之助 |