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あらすじ【夜の部】

5月2日(金)~5月26日(月)

夜の部 午後4時開演

 鎌倉稲村ヶ崎で亡父の亡霊から鼠の妖術を授かった足利家の悪臣仁木弾正。弾正は亡父の無念を晴らすため、当主の足利頼兼を遊興に仕向け、跡継の鶴千代を毒殺しようと御家横領を企てる。一方、足利家に仕える絹川与右衛門は、腰元累との不義で手討ちになるところ一命を助けられていた。弾正の隠謀を知った与右衛門は、悪事を防ごうとするが・・・

 仙台藩伊達家の御家騒動を題材にした作品のひとつに文化十二年(1815)に初演された四世鶴屋南北の『慙紅葉汗顔見勢』があります。通称「伊達の十役」と呼ばれるこの作品は、七世市川團十郎が登場人物十役を早替りで勤め大当たりをとりました。

 その後、上演が途絶えていた幻の作品を、昭和五十四年(1979)に三代目市川猿之助(現在は猿翁)が明治座において復活上演したのが本作です。御家横領を企む仁木弾正の物語を中心に、横軸では与右衛門と累の物語も絡み、善人と悪人、男女の十役を四十数回の早替りと宙乗りなどの仕掛けで見せるスペクタクルな趣向は大好評を得ました。

 この度は、染五郎が初役で十役に挑みます。口上の後の発端では仁木弾正に妖術を授ける「術譲り」をはじめ、序幕の与右衛門と傾城高尾、土手の道哲の三役早替りや二幕目の六役早替りのだんまりなど趣向を凝らした見どころが続きますが、三幕目の鶴千代の乳母政岡の我が子千松を犠牲にする悲劇の物語は、この作品の奥行きを気品ある女方で見せます。その後には、力強い男之助から仁木に替わっての「宙乗り」となり、猿翁演出の見どころの一つです。さらに、四幕目の裁き役の細川勝元が爽やかな弁舌をふるう場面でのあざやかな台詞の応酬は俳優の力量が発揮されます。

 明治座では三十二年ぶりの上演となる話題作をお楽しみください。